【本学出身教授 インタビュー】大学生での研究が人生の転換点に

当時の自分と今の学生の姿を重ね、学生時代を振り返る佐々木教授

 本学を志望する人にとって、東北大での学生生活をイメージするのは容易ではない。そこで、大学時代を本学で過ごし、現在も本学薬学研究科で薬理学の研究を続ける佐々木拓哉教授に話を聞いた。     (林亮佑)

社会生活を見据えた大学生活を

―学生時代に感じた本学の印象は

 自分が薬剤師を目指していたことや岩手県出身ということもあり、薬学部のある東北大を志望していました。実際に入学してからの印象は、現在もそのような特徴はありますが、東北出身の学生だけではなく他の地域からの学生も多いように感じました。東北にいながらも大学生のうちにさまざまな人と交流できたことは、今でも大切な経験だったと思います。

―学生時代をどう過ごしたか

 正直な話、授業には真面目には取り組めておらず、塾講師のアルバイトを多くしていました。最初は目標もただ薬剤師になりたいというだけで、具体的には定まっていませんでした。ただ試験勉強は自分も周囲の東北大生も熱心に取り組んでいたことは覚えています。大学生は怠けようと思えばいくらでも怠けられると思います。しかし、熱心に取り組んだものが一つでもあれば、社会に出てからも役に立つ「頑張る癖」というのが身につくと、今振り返って感じますね。

―研究者を目指し始めたきっかけ

 薬学部の学生なら全員がそうなのかもしれませんが、どうして薬が病気に効くのかを説明できるようになれれば面白いという思いもあり、現在も所属している薬理学分野の研究室に入り、薬の理論を研究していました。


 そのうち薬理学という研究分野が自分の肌に合ったのか、自然と研究室で費やす時間が長くなりました。気が付けばそのまま研究の道へと進むことに。当時の自分は、まさか20年後の自分が同じ研究室に戻って、同じ分野の研究に取り組んでいるとは思いもしませんでした。

―現在進めている研究について

 研究室では脳と身体との疾患の関係について研究をしています。薬理学は本来全身の疾患に対して薬が効くメカニズムを研究する分野です。しかし、その中でも脳への薬の作用、さらに脳自体の仕組みもその多くは未知のままです。ストレスの際の胃痛などは一般的に「病は気から」と説明されますが、科学的には完全な証明ができていません。このような脳と身体の関係性を説明できれば、病気を根本的な原因から治す薬を開発することも可能となります。

―本学を目指す全国の高校生へ

 長い人生にしてみれば大学生活はほんの一瞬ですが、大学はこれから社会に出るための糧を培える場所だと思います。そのために大学生活ではユニークな仲間との出会いと、物事に熱心に取り組める環境を大事にしてほしいです。全国から多種多様な学生が集まり、また入学してからも能力を存分に伸ばせる環境が整っていることは本学の魅力です。

佐々木拓哉
ささき・たくや
岩手県一関市出身。2005年本学薬学部卒業。10年東京大学博士課程修了。東京大学薬学系研究科特任准教授などを経て、21年より本学薬学研究科教授。22年からは本学医学系研究科教授を兼任。